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■347■  11月5日 2004

「タイのイスラム」
 
タイのイスラム_d0147083_13115385.jpg タイ南部がきな臭くなっています。

 この地区は、昔からイスラム教徒が多く住み着いており、たびたび分離独立を叫んで暴動を起こしていましたが、最近の事件で72人が死亡したとなると、ことは重大です。これはタクシン首相が強硬路線をとったというよりは、宗教が根底にある解決不可能な問題なのです。

 中東問題でもそうですが、宗教が根底にある紛争は、そう易しくくは解決しません。イラクや、イラン、パレスチナの問題なども、お互い信じる宗教が一神教を根底にしていますので、問題が複雑で紛争が連綿と続きます。今の時代はお互いの宗教を認め合い、共存する道を探るべきですがなかなか問題は簡単ではありません。

 タイは仏教国と信じられていますが、最近ではキリスト教などもかなり台頭してきているといいます。特に都会の若者層がそうで、どことなく抹香臭い仏教より、洗練されて見えるのはサキさんンだけでしょうか。それに、最近の腐敗したタイ仏教界に嫌気がさしている人たちの関心を集めているようです。それに、北部山岳地帯にも従来の土着的精霊信者がキリスト教に改宗しているケースが増えてきており、こんな山奥にという深い山間部に、十字架をいただいた教会がひっそりと建っているのを何回も目撃しました。

 イスラム教もそうで、タイでも、南部には古くから沢山の信者がいました。昔出会った会社管理人もそうで、当時、独立家屋を事務所にしていましたので、住み込みの管理人がいました。彼は深南部の出身で、イスラム教の名前ももっており、確か奥さんは2人いたと思います。しかし、その事実を知ったのはかなり親しくなってからで、普段は宗教のことから離れた感じで、ひっそりと生活している様が、かいま見られました。昔のバンコクのイスラム信者はこんな感じでした。

 ところが、35年振りにバンコクに生活してみると、街にはイスラムの格好をした若い女性など結構目につき、イスラム教徒が自信を持って生活している様がたびたび目撃されます。昔は、イスラム教徒は肩身の狭い生活を余儀なくされる社会環境にあったことは想像できます。今は、街をよく観察していると、新築のモスクが結構目につきます。それもバンコクの中心地に2カ所も目撃ししましたし、たまに出る郊外では、夕刻コーランを唱える声が聞こえてくることがありま す。

 タイ南部の4県は、以前はマレーシア領でした。それに住民の4分の3はイスラム教徒が占める土地柄です。そんな状況下にあるので、仏教徒が90パーセント以上を占めるタイ社会にあっては、行動や、生活や、発言に窮屈を強いられることもあるのでは、と想像します。イスラム教徒はタイ全土で4パーセント以下、深南部をのぞけば圧倒的に少数です。

 時代の変化がそういう社会を作り出しているのでしょうが、宗教が絡んだ感情のもつれは、簡単には解きほぐすことはできません。イスラム教とキリスト教、ユダヤ教はその原点を共有するといわれ、2000年以上にわたって紛争を続けています。一神教はお互いを認めないだけに問題が複雑で、紛争解決も困難を極めます。

 今回の南タイ問題も、隣国マレーシアのマハテール前首相が「自治を認めてはどうか」という発言をして、物議をかもしています。イスラム系住人が80人以上も死亡している現状を見かねての発言だとは思いますが、宗教が絡んだ問題は慎重さが必要です。

 先日のバンコクポストには、深南部の代表が国王に面会を求めている記事がありました。しかし、この国王自らは仏教の最高擁護者で、タイの国王は仏教徒と決められています。会って強硬路線をとり続けるタクシン首相の罷免を要求するとあります。この問題も宗教が絡んだ問題だけに、解決の糸口を見つけるのはかなり困難なようです。

 ブッシュ大統領が再選されました。彼の信じる宗教はキリスト教原理主義で、これも他の宗教を認めない一神教です。イラク問題も宗教が根底にあると解決の道は遠いと思われます。
# by newsaki | 2004-11-05 13:10