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風評被害と仏誕節

■610■ 5月23日 2010

「風評被害と仏誕節」

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家人のもとに、こんな手紙がきました。

「四月の来日は取りやめたそうですね。正解、正解。毎日バスに揺られているような生活で、今ではバスが転覆するくらい揺れても、起きなくなりました。これは2,3年続くそうです。本当に揺れない地面って安心ですよねー。茨城産の野菜も、みな、買わなくなったでしょうが、私は、中国野菜には一日で死ぬ、日本野菜は20年後に癌で死ぬとなると平気で買います。私たちは、まだ地震と原発が爆発するのではないかという真只中、昨日は、満開の桜の地下で、お弁当を食べながら、奇妙な安らぎを感じ、あの世みたいだなーと、思ったりしました。」

同時に久しぶりに東京からチェンマイに帰ってきた次女の感想では、最近の余震にはだいぶ慣れてきて、夜中に揺れがあっても、「揺れが小さいので、茨木あたりが震源地か」と安心して眠りにつき「今度のはかなり揺れたので震源地は千葉あたりかな」とちょっと不安になっても再び眠りにつくことを妨げられることは少なくなったといいます。でも、皆不安を抱えて床につくことは同じで、余震は皆を不安にしているようです。

上記の手紙には多少の解説が必要です。手紙の主は、我々と同時期に香港に住んでいました。「中国野菜は一日で死ぬ」とあるのは、香港の野菜はすべて中国からの輸入で、残留農薬の問題はかなりの頻度で発生しており、特に冬に人気の火鍋(しゃぶしゃぶ)に入れる野菜で、多くの人が下痢症状をおこし、中には死亡してしまうという重大問題が頻発しました。

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中国の衛生管理は劣悪で、最近でもこの問題はなくなっていないようです。そんな香港で聞いた話では、最近は風評被害が深刻で、日本人経営のレストランは軒並み各が激減し、中には閉店を余儀なくされている店もあるとのことです。先日もこの問題をNHKが特集しており、僕の知り合いのレストランも閉店の案内が貼られた玄関が写しだされていました。その他、香港人サラリーマンのランチを顧客とした店の苦境も聞こえてきました。

僕が香港に滞在していた4中旬の状況では、寿司屋も、天ぷら屋も日本のフランチャイズに店は、どこも満員の盛況で15分ぐらい待たされました。ということは、日本人経営を売り物にはできない状況に陥っていると推測出来ます。原発以前は金持ちを顧客としていた店が全滅と言うことになり、何時の時代にも、このような現象に一番初めに反応するのは社会のアッパーレベルの人たちだと言うことがよく分かる現象です。

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日本産の魚介類は、放射能被害を受けているというデマはとどまるところを知らない感じですが、東北産魚介類の放射線測定を始めたのも香港が最初です。それに日本行きの旅行は大半がキャンセルされ、1ヶ月後に再開された最初の団体旅行は、北海道行きで、それも、日本滞在中にマグニチュード6以上の地震発生の場合は旅行費用を全額払い戻すという苦肉の策で集客しているようです。

ここまで神経質になっている香港の実情は、空気中の浮遊放射能値は日本より高いと言われますし、国境を接した深センにある大亜湾原発は香港からわずか50キロしか離れておらず、それが小さな放射能漏れ事故を多発しており、日本と同じく事故隠蔽問題が発覚しているのにはそれほどの関心を示していないようです。この大亜湾(ダイアベィ)原発建築時は香港で大反対運動が起こりましたが、今は全く人々の心配の種にはなっていないほど、忘れ去られています。

中国の発表では中国の原発は今回大事故を起こした福島原発より20年は技術が進歩しているもので、安産性は抜群で、以後、原発の発電能力を2020年には2010年の8倍まで高める計画で、現に福島以降新しい原発を稼動させたとあります。近くの恐怖より遠くの心配という図ですが、あれほど大反対をしていた原発も、今や香港社会や日常に織り込み済みという感じに人民の意識変化をしているようです。そして、遠くの福島原発に異常反応をしているようです。

しかし、日本の地震、津波、原発事故は遠くチェンマイにあっても無関心では折れない大問題で、事故の終息が一日も早いことを願います。

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5月17日は仏誕節(ウィサーカプーチャー)です。お釈迦様が下誕、成道、入滅した日とされています。毎年陰暦6月の満月の日がこの日で、今年は5月17日にあたります。各寺では読経のあと、お線香と蓮の花をもって仏塔まわりを3階まわるウィアンティアンを行います。久しぶりに近くのワット・スワンドークにでかけました。ちょうどチェンマイ滞在中の長女の誕生日がこの日にあたり、何か特別の感情をもった彼女が、非常に興味を示したことが出かける原因でした。

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数年前出かけたときはもっとたくさんの老若男女、善男善女がお参りをしていた印象がありますが、その日はそれほどの参拝者がいませんでした。時間が早かったこともあるのかも知れません。蓮の花と線香を持って、読経をしながら仏塔のまわりを3回まわります。中には、お経を書いた紙を手に持ち、それを唱えながら廻っている若い女性もいます。今回気がついたことは、参拝者の服装がさらに自由になったことです。軽装の人が大変で、こんなあたりにもタイの変化が見て取れます。久しぶりのワット・スワンドークは隣接するお墓はあくまでも白く、巨大な仏塔は黄金色に新しく化粧直しをして、輝いています。

タイは下院選挙が始まります。外国に逃亡しているタクシン首相のリターンマッチという様相を示していますが、新聞子の予想では、現与党民主党が連立を組み、タクシン一派が単独第一党になっても政権交代は不可能だとの見方を示していますが、あれだけ激しい抗議集会を行った余韻がまだ漂っている現状では、事態の判断は予断を許さない状況です。しばらく静かだったタイがまた騒然となる予兆を感じさせます。
by newsaki | 2011-05-23 13:08 | 2011