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刑務所

■263■   6月7日 2003

「刑務所」   

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チェンマイ市内を、ちょっと北の郊外に走った場所に「チェンマイ刑務所」があります。最近、旧市街から引っ越してきて、まだそんなに年月が経っていないとのことで、建物も新しくモダンです。窓に格子がはまっているでもなく、建物全体の窓に、横のさんが入っているデザインだけなので、知らずに通りすごすと、ここが刑務所だとは気がつかない建物です。高い塀で囲まれているわけでもなく、ただ国旗が立っていますので、一見普通の政府間関係の建物と見えます。

 事実、この向かいにはチェンマイ・シティーホールがあり、行政の中心地です。ここには、国旗を掲揚した多くの建物がありますので、よけいにそんな感じがするのかも知れません。この刑務所、面会日になると、早朝から沢山の人が集まっています。聞くところによると、タイでも刑務所の食事はまずく、面会人に求められる一番の要求は、食べ物の差し入れとのことです。しかし、よく事情を調べてみると、タイの刑務所は日本のそれより、開かれた施設の感じがします。

 タイの受刑者は、男は麻薬、女は経済犯が大半のようです。近隣諸国のように、政治犯が沢山収容されているという事実はない模様です。タクシン政権は、社会浄化活動にことのほか熱心で、3、4月には麻薬撲滅を掲げて、大キャンペーンを実施しました。わずか1ヶ月の間に、千人の死者を出すほどの激しさで、結局このキャンペーン期間中に、2千人の死者が出ました。国連人権委員会が、あまりの短期間の死者の急増に、調査官を派遣すると宣言して、物議を醸し出したくらい激しい取り締まりでした。結局、死んだのは、大物が自分への捜査が及ぶのをおそれて、小物を処分したのだというのがもっぱらの噂です。大立て者は、今回も、捜査のアミから見事逃げおおせたようです。

 今月からは、第2弾として「マフィア」一掃キャンペーンを開始ししました。先の麻薬撲滅運動開始直後、麻薬王が首相の首に8000万バーツの賞金をかけたくらい、タイ社会にははびこる麻薬の蔓延は深刻です。マフィアは長年、麻薬、禁制品の密輸入出、売春、人身売買、恐喝、強盗など、悪の限りを尽くし、社会悪の巣窟となっていました。大物を捕まえるべく、ブラックリストも作成されています。

 さて、タイの女性受刑者、これはタイの女性がしっかり者だという面が、経済犯を沢山生み出す原因になっています。このメールマガジンでも再三取り上げていますが、チェンマイでは働き者は女性です。それだけ経済的にもどん欲で、「財布のヒモ」はがっちりと握っています。ここチェンマイでは、一寸大きな買い物をするとき、値段交渉となると、店の主人は、必ず家人を相手に話をします。決してサキさんの方には話しかけません。値段の決定権は女性と、決まっているがごとくです。どうせ旦那に話しても、普段から「尻の下」にしかれているのだから、という思い入れが、ありありです。確かに、タイの女性は底力が強く、家庭の経済危機が訪れると、女性に俄然元気が出てきます。これが、男が働かない原因にもなっているのですが・・・・

 それだけに、お金に関するもめ事も多いようです。タイはメンツを大切にするお国柄です。だから、かなりの額の金銭の借り貸しも、きちんとした借用書を書くことがないようです。結局それがもめ事の原因になっているのですが、一向に改まる様子がありません。結果として、詐欺や、事によると刃傷沙汰になったりしてしまうようです。タイで生活する教訓「お金の借り貸しはできるだけしないように」が第1条です。「もし貸してしまったら、それはあげてしまったと解釈すべき」が、第2条です。

女子刑務所は旧市内の真ん中にあります。

そんな、しっかり者の沢山入っている女子刑務所から、ほほえましきニュースも聞こえてきます。コンピューターの不具合で、資料が消えてしまって詳細はお伝えできませんが、ある時、タイの刑務所の中では「ミスコン」が行われるという記事を読みました。その内容は「タイ女性は刑務所の中でも、タイ女性として誇りを持って生きていきたい。そんな心意気をこめて、ミス刑務所を選びたい。タイ女性の心意気をおおいに示す」のが趣意とあります。全体的に、タイはミスコンが好きな国ですが(香港もこの気がありました)刑務所の中まではと、驚きました。

 こんな試みも、単調な生活を、どう打破するかという対策の一つだと考えます。ある統計では、「受刑者の20パーセントが自殺を考えたことがある」とのことです。単調な生活と、人一倍強い自尊心と、悔悟の念が、そう考えさせるようです。タイは伝統的に、同性愛者の多い国です。刑務所内の同性愛の問題。かなり深刻な事態にになっているようで、ある報道によれば、試みとして男子受刑者と、女子受刑者を面会とはいわないまでも、お互いを見せ合う機会を作る試みがなされているとのことです。兼務所内の作業風景を、そっと見せるということです。統計によれば、同性だけを同じ場所で生活させ、異性を見ない環境に置けば、同姓がより綺麗に、すてきに見えてくるという、調査結果に基づいて、試験的に異性を見せる実験をしているようです。

こんな報道もあります。
「中部ナコンサワンの刑務所の、中庭にたてられたプレハブの小屋4軒で、受刑者は妻と『夫婦水入らず』で過ごす時間を持てます。刑期が4年未満、模範囚であることを条件に、予約を入れれば月一回利用することが可能です。部屋にはキッチンなども完備されていて、妻の手料理を堪能することもできます。この設備を利用した、麻薬の取引で服役中の囚人は、「出所したらよき夫、よき父親としてまっとうに生活していきます」と、誓ったとあります。小屋の中では欲望に身を任せてもよいが、あくまでも家庭の絆を深め、出所前に、人間らしい感情を取り戻してもらうのが目的だと、担当者は釘を刺しています。結果がよければ、今後ラヨン県など、他地区でも建設の計画があるそうです。

 こんな設備は、アメリカでもすでに導入されているようです。最近、腰皮手錠や、受刑者への暴力が問題視されているかの国の事情とは、おおいに異なるようです。刑務所の中でも、人間性を失わない試み、タイがそれだけ開けた国であるのか、犯罪多発の国なのかは他の議論を待たなければなりますまい。なにかと話題のおおいタイの刑務所ではあります。
by newsaki | 2003-06-07 22:10 | 2003