■712■ 6月20日
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「草間彌生」展と同じ、新東京国立美術館で開催の「ミュシャ」展も同時に鑑賞しました。ここも大変な人気で、入場までかなりの時間待たされました。東京は人口一極集中で大変な数の人が住んでいるわけですから、展覧会場も混み合うのは理解できますが、今回の混み具合は異常です。

その昔、ルーブル美術館を見学しましたが、ここまでの混雑ではありませんでした。と、いうよりはどちらかというと閑散とした感じで、拍子抜けしたことを思い出します。それだけ東京人が美術鑑賞に熱心なのではと思いますが、裏を返せば興味が一極に集集中している感じがあり、新聞やテレビが盛んにプロモーションをしている結果なのかも知れません。だから休日は日本全国どこに行っても人混みに遭遇するわけです。だからこの黒川紀章設計の新東京国立美術館も人口の比率からすると小さすぎる感があります。

僕のように出来るだけ世間に背をむけた生き方をしている孤独人には、この混雑は理解のできない現象で、それになんだか息苦しく人酔いもします。もちろん絵画を独り占めしようという魂胆は僕にはありませんが、もう少し静かな環境でゆっくりと鑑賞したいものです。

19世紀末、パリで花開いたアールヌーボ、その主導者の一人、ミュシャはパリ時代の作品で有名ですが、今回の展覧会はパリでの活動の後、故郷のチェコや自身のルーツであスラヴ民族のアィデンティフィーをテーマに大キャンバスに描いた作品が注目です。パリで成功を収め、50歳で故郷に帰ったあと晩年16年間を制作に捧げた渾身の大作「スラヴ抒情詩」は6mX8mの巨大なカンヴァスに描かれた油絵で、古代から近代に至るスラヴ民族の栄光と歴史を描き出す大スペクタクルです。

それにしてもこの油彩画のサイズの巨大なこと。それだけで観る人を圧倒します。ぐいぐいと画家の情念と息づきが迫ってきます。アールヌーボ時代の作品がサロン的であれば、このスラヴの抒情詩は鑑賞者をインボルブしてあまりあります。この巨大なカンヴァスは、広大な城館の巨大な壁にかけられてこそその魅力を十二分に鑑賞者に伝えることができる作品群です。その点から考察すると、教会の大聖堂の壁画、王侯貴族の城館の壁など、西欧の絵画は巨大な空間を埋めるサイズで絵がかれていて迫力満点です。

その伝でいえば、このあと鑑賞した葛飾北斎の版画は掌握のサイズで、日本と西欧の住まいのサイズの大小がかなり関係しているはずです。一部、寺社や城の大広間の襖絵や、衝立などの描かれた日本画がありますが、それとて西欧の絵画の大きさとは比較にならないスケールです。日本画は四畳半の世界だといえます。

この大きさの違いが、歴史や、文学や、風俗や、宗教、ひいてものの考え方、見かたの違いを生む根源になっているのだという僕の信念を裏付けてくれる今回のミュシャ展でした。巨大なミュシャの作品は、もっと大きな会場で鑑賞したいものです。
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# by newsaki | 2017-06-20 11:08 | 2017